―序章― 石

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   先程まで降っていた雨が止み、ようやく顔を覗かせた空には、薄らと光が射し虹が広がる。  葉に付く水滴が光を帯び幻想的な雨上がりを演出する。    『……やっと上がったな。』   紗那盛ーサナモリーは家の木窓から外を眺め、溜め息混じりに呟いた。    「本当ですねぇ。」    紗那盛の誰に言ったでも無い言葉に紫織ーシオリーが相槌を討つ。    『あぁ、ちょっと畑に行ってくる。』    紗那盛は紫織の方を向き、笑顔でそう告げると、鍬(クワ)を担ぎ外に出た。    「あっ あなた、何かあったら大変ですから早めに帰っていらしてね……。」    紫織は少し不安げな顔付きで俯いている。  紫織の視線の先は、大きく膨らんだ自分のお腹にあった。  元々華奢な紫織の身体には幾分重過ぎるであろうお腹を摩りながら、今度は紗那盛の瞳を不安そうに覗き込んだ。    『大丈夫だよ 夕刻までには必ず帰るから。』    紗那盛は紫織のお腹を見て嬉しそうに、柔らかく微笑む。  まだ見ぬ我が子に挨拶するかのように、軽く紫織のお腹を撫でた。  紫織も紗那盛の柔らかい笑顔と雰囲気に不安など吹き飛ぶ。  紫織の笑顔を見て紗那盛は安心し、我が家を後にして畑に向かって行った。  紫織は紗那盛の姿が見えなくなるまで見送っていた。
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