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畑に着いた紗那盛は、夕刻までには家に帰れるようにと、慌ただしく鍬を土へと打ち下ろす。
ザッ ザッ という音と、紗那盛の荒い息使いだけが辺りの木々と景色に溶けていく――。
――どれくらい経ったのか紗那盛が気が付くと、日は傾き辺りは夕焼けが広がっている。
『そろそろ帰るか…。』
紗那盛は手ぬぐいで汗を拭うと一息つき、足速に家の方へと歩く。
汗を流した後だからだろうか、夕日に染まった空と、冷たい風、慌ただしく響く鈴虫の鳴き声が妙に心地よい。
畑を抜け、川沿いに少し歩いて行けば紗那盛の家が見える。
紗那盛が畑に行く時にいつも使う道である。
川を何気なく見ながら歩いていた紗那盛の足が、止まった――。
『 あれは…… 』
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