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結城の死によって、否、彼の遺した遺書によって事の真相がある程度明らかとなった。
実希の証言と梅島館の間取り等から絢米と金子を始めとした捜査陣は二つの死亡事件を以下の様に推察、警察の事後処理も同じ様なものに至った。
事件(守の死亡事件の事だが。)の当夜、結城は、本土の漁港に停泊していた漁船か、或はボートの様な物だったかもしれないが、何れにせよ鍵のかかっていなかったエンジンを積んだ船に乗り、梅島に向かった。
船舶操縦の免許を持っている彼にとってそれは簡単過ぎるほどの事でしかないだろう。
そして、梅島館に行き、裏手に回り込み、広間の窓から侵入。広間で寝ていた裕也と実希を起こさない様に注意を計りながら、倉庫からロープを持ち出し、広間の座卓に置かれていた部屋割り図を元に守の部屋を訪れる。この際に合鍵も持って行ったのだろう。
そして、そのロープを使い、眠っていた守を殺害し、蛍光灯の傘に吊るす。
後は、誰にも見つからないように梅島を後にするだけである。
金子と共に居れば、捜査班に配属されることもおよそ絢米の人柄から予定していたに違いない。
そして、裏口の下足痕を自分で調べに行き、何も見付からなかった事にしてしまえば、その時刻に自分がそこに居た証拠も無い。
もちろん、指紋なども残さぬ様に手袋の様な物を着用していたはずだ。
自殺ということにしてしまうのは、捜査班に入る事が出来れば簡単な事ではあるし、仮に捜査に参加できずに殺人ということになっても、梅島で殺害してしまえば大学生達に疑いの目が向けられる訳である。
まさか本土に居た警察官が犯人だとは誰も思いもしないだろう。
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