英雄

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総人口、約三億人。 この大国カルティナが、今でも栄え続けているのは。私の大好きな英雄のおかげだ。   五年前。敵対国に奇襲をかけられ、大規模な戦争が起こった。ノロマな政府を差し置いて、今は護国団という名のついた兵軍が活躍したんだ。   その中でも、ダンっていう青年は飛び抜けた実力があって、抜群のリーダーシップで軍を引っ張ったらしい。彼が戦争を終わらせたんだ。その命と引き換えに――。   私の家族を奪った戦争。それを止めた英雄を、憧れずにはいられなかった。   だからリーにも、そんな人になって欲しいのに……。   すねた心が蘇ってきた時、前方を歩く美しい女性が目に入った。   「フランさん!」   私は彼女に駆け寄ると、笑顔で声をかけた。   「あら、モネちゃん」   フランさんはふわっと笑うと、私の頭を撫でてくれた。   彼女は他でもない、英雄ダンの妻だ。   フランさんは近所に住むお姉さんで、家族をなくした私を、本当の妹のように可愛がってくれている。私はフランさんに、ダンの話をしてもらうのが大好きだった。   「今日もダンの話聞きにいってもいい!?」   フランさんに逢って、一気に私の機嫌は治っていた。
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