16人が本棚に入れています
本棚に追加
総人口、約三億人。
この大国カルティナが、今でも栄え続けているのは。私の大好きな英雄のおかげだ。
五年前。敵対国に奇襲をかけられ、大規模な戦争が起こった。ノロマな政府を差し置いて、今は護国団という名のついた兵軍が活躍したんだ。
その中でも、ダンっていう青年は飛び抜けた実力があって、抜群のリーダーシップで軍を引っ張ったらしい。彼が戦争を終わらせたんだ。その命と引き換えに――。
私の家族を奪った戦争。それを止めた英雄を、憧れずにはいられなかった。
だからリーにも、そんな人になって欲しいのに……。
すねた心が蘇ってきた時、前方を歩く美しい女性が目に入った。
「フランさん!」
私は彼女に駆け寄ると、笑顔で声をかけた。
「あら、モネちゃん」
フランさんはふわっと笑うと、私の頭を撫でてくれた。
彼女は他でもない、英雄ダンの妻だ。
フランさんは近所に住むお姉さんで、家族をなくした私を、本当の妹のように可愛がってくれている。私はフランさんに、ダンの話をしてもらうのが大好きだった。
「今日もダンの話聞きにいってもいい!?」
フランさんに逢って、一気に私の機嫌は治っていた。
最初のコメントを投稿しよう!