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「ふふ、いいわよ」
長い髪をなびかせ、柔らかく微笑むフランさん。私は「やったぁ!」とはしゃいで喜んだ。
麗らかな午後。晴れわたる空の下を暫く歩くと、彼女の家に着いた。
「スープ温めるからちょっと待っててね」
「わーい! ありがとうございます」
フランさんのスープはとても美味しい。昼食をとっていない私の為に、彼女は着くなり台所に入った。
私はテーブルの傍の椅子に座り、窓際に置かれた写真立てを眺める。そこに飾られた写真に写るのは、生前のダンと若き日のフランさん。二人とも、これ以上ないって位笑っている。
「幸せそう……」
ぽつりと呟く。台所からは良い匂いが漂ってきた。
「やっぱり、英雄の家族は幸せだよね! フランさんの家は生涯讃えられるだろうなぁ」
うっとりと写真を見つめながら、フランさんに聞こえるように声を大きくした。
すると、いつもならすぐに返ってくる返事が、ない。不思議に思って台所に目をやると、フランさんの後ろ姿はちゃんとある。
「……モネちゃん。今から言う事、聞いたら忘れてくれる?」
不意に、いつもより暗い声で、フランさんは口を開いた。
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