繋いだ手

3/3
前へ
/3ページ
次へ
「ちょっとさ、言わなければいけないことができちゃってさ…」 「え?何?」 「彼女ができたんだ」 「え!?」 「…ごめん」 「ごめんって…私は、私はなんだったのよ!私は、私は…」 「…ごめん」 「ちょっと!さっきからごめんごめんって、やめてよ!」 「子供が…子供ができたんだ。だから…だから…」 「もぅ!いいかげんにして!!彼女の次は子供?!馬鹿にするのもいいかげんにしてよ!」 「ごめん。でも嘘じゃないんだ。だから、だから…おまえとはもぉ…」 放心状態っていうのは、あれがはじめてだった。 なんなんだろ…あれ… 気付かないうちに涙が溢れてきた。 なんで?なんで?なんで? 「凝縮した悲しみの粒が頬を伝ってこぼれ落ちたら、明日にはその頬を優しく撫でてくれる人がきっと現れるから」 その言葉が最後の言葉だったなぁ。 そっか…あれからもぅ二年か… 「だーかーらー!俺はパスタ屋にしたいわけ!聞いてる?なぁ?聞いてる?」 「あっ、わかった。そうしよそうしよ!ほら、そろそろ映画はじまっちゃうよ!ほらほら、ボサッとしてないで行くよ!早く早く!」 あの日に握れなかった手を、今日は私からしっかり握って、私はまた歩きはじめた。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加