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「ちょっとさ、言わなければいけないことができちゃってさ…」
「え?何?」
「彼女ができたんだ」
「え!?」
「…ごめん」
「ごめんって…私は、私はなんだったのよ!私は、私は…」
「…ごめん」
「ちょっと!さっきからごめんごめんって、やめてよ!」
「子供が…子供ができたんだ。だから…だから…」
「もぅ!いいかげんにして!!彼女の次は子供?!馬鹿にするのもいいかげんにしてよ!」
「ごめん。でも嘘じゃないんだ。だから、だから…おまえとはもぉ…」
放心状態っていうのは、あれがはじめてだった。
なんなんだろ…あれ…
気付かないうちに涙が溢れてきた。
なんで?なんで?なんで?
「凝縮した悲しみの粒が頬を伝ってこぼれ落ちたら、明日にはその頬を優しく撫でてくれる人がきっと現れるから」
その言葉が最後の言葉だったなぁ。
そっか…あれからもぅ二年か…
「だーかーらー!俺はパスタ屋にしたいわけ!聞いてる?なぁ?聞いてる?」
「あっ、わかった。そうしよそうしよ!ほら、そろそろ映画はじまっちゃうよ!ほらほら、ボサッとしてないで行くよ!早く早く!」
あの日に握れなかった手を、今日は私からしっかり握って、私はまた歩きはじめた。
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