16人が本棚に入れています
本棚に追加
流れるようにアードの指がキーボード上を踊る。いつの頃からか、コンピューターは完全な音声入力形式が当たり前となっていた為か、ドーム出身者のガイもキーボードの勝手が判らなかったのである。
でなければ、とっくの昔にガイ一人行動を開始していた事であったろう…が、そうそうは思い通りに行くものでもない訳である。
幸い旧時代のコンピューターをアウトピープルの村が使用していた事が、ガイにとっての頼みの綱に成ったのであった。
取り分け、親友のアードがコンピューターに強かったのは救いであった。
だが、ガイもこれまでの数日間思い悩んだのであった。
下手をすれば、自分のみならず親友をも巻き込んで終いかねない、犯罪行為に成りかねない事を彼とて感じていたからである。
ともあれ、アードとエイカの協力が得られた事は心強い助けであった。
「やっぱり駄目だぁ~…パスワード無くちゃ無理だよ…。」
アードが暫く孤軍奮闘したあげくに両手を挙げた。
「パスワード回避して潜り込んだろうと思ったけど、ガードが硬いよ!」
椅子の背もたれに体を預けながら、アードは軽く自分の頭を叩いた。
「パスワード…かぁ~…。」
オウム返しのようにガイが呟いた。
「…とにかく、適当なワード入れてみよう。」
アードとガイは、二人してあーでもない、こーでもないと、思い付く限りの言葉を打ち込んでみるのだが…ディスプレイに変化は無かった。
それまで、ひっそりと存在を空気に溶かしていたエイカが、初めて口をはさんだ。
「ねぇ…あたしさぁ、昔父から聞いたことが有るんだけど…。」
アードとガイは、藁をも掴む想いで振り返った。
「あたしの十代位前の先祖なんだけど…このシステムに係わった人が、居たんだって…で、その時のプロジェクト責任者の言葉…なんかの本に有ったような気がするんだけど…あたし、読んだ…。」
「うわーっ!思い出してくれ~…!」
最初のコメントを投稿しよう!