プロローグ

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西暦3×××年…世界は荒廃していた。 西暦二千三百年頃から始まった環境統制法は少なくなった自然の保護を主眼に人類を各ブロックごとに集め完全なる平和都市を維持運営していく特殊法である。 二十世紀に入って急激に発達した内燃機関は世界中に拡大し、その排ガスを中心に環境破壊を促進させていった。 その結果、地球温暖化、緑地の砂漠化、酸性雨などなど人類のみならず多くの動植物に多大な被害を与えるに至った。 世界的規模で人類他の生存を脅かす現象が頻発し始めたのである。 国連を中心に多くの科学者をはじめ、各国家による研究はエネルギー問題を含めて急がざるをえぬ状況を呈し、利益主体の巨大企業すら全社を挙げて問題解決に当たらねばどうにもならない危機的様相が浮かび上がって来ていたのである。 幸いにも第一にエネルギー問題における解決の糸口となる研究が大幅に進展し排ガスをはじめ生物の生存を妨げる物質の発生量を極限まで少なくする事に成功した事が、人類に自信となった。 西暦2200年間近、人類は大気の清浄化に成功したのであった。 内燃機関の拡大から凡そ300年を経過していた勘定である。 環境破壊は一応食い止められた。 だが今度は別の形を取って新たなる危機が訪れた。 西暦2000年前後より、緩やかではあったが、世界の人口が減少傾向を辿り始めたのである。 当初、世界保険機構は、将来に向けての食料危機の見透しからこれを是としたが、五十億を下回った頃から、少々慌てだした。 世界各国に向けて注意を促すアピールを行ったが一度転がりだした現象に歯止めを掛ける事は殆ど不可能の様相を呈していたのであった。 重労働を忌む若者達に代わって、パーソナルロボットが市場に現れて以来拍車が掛かるようにその現象は加速度を増し、あれよあれよという間に人口は二十億を切ってしまったのである。 福祉制度の充実は人々の勤労意欲を削ぎ、遊び暮らす若者が増えていった事に加えて、婚姻のあり方が大きく様変わりしたのであった。 出産育児を嫌う者が続出しその結果、子供の誕生が目に見えて無くなっていくという、種の保存に欠かせない大問題となっていったのである。 世界保険機構は意を決し人工授精、人工保育器の投入に踏み切った。
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