プロローグ

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西暦2600年頃よりパーソナルロボットによって建設が開始された巨大都市型ドームは、細菌やウイルスの侵入を完璧に阻止し、快適な住環境を造り上げた。 それとあいまって、人工乳児施設は遅滞なく作動し、年間一万人の乳児を産み出した。 当然の事この行為に反発の声が上がるのは必至であった。 ローマ法皇庁は、神を冒涜するものと批判を繰り返した。 しかし、機械文明に取り囲まれ、宗教心を失った人々の心をどれほど動かし得たものであろうか。一度失墜した権威は、簡単に取り戻せるものではなかった。 人口操作に歯止めを掛ける事は出来なかった。いつしか、人類は世界の各地、数千カ所に点在する巨大都市型ドームに集中して生活するようになっていた。 人口調整によって産み出された子供達は、厳重に管理された育成区によって教育体制も完備し、市民権も得て大事に育てられたのであった。 その他養子制度や実子を欲しがる老人などの為遺伝子操作を始めとしたクローンなどありとあらゆる手段も合法と化してしまっていたのである。 為、人としてのあり方そのものを危険視する動きとて無かったわけではないが、タブーすら失墜したのか大半の住民に不信感すら浮かばせ得なかったのである。 だが心ある者達とて居なかったわけではない。 管理された環境に反発し、ドームを捨てる者達とて少数ながらあったのである。 比率的に見ても、ドーム人口の一割にすら届かない程少数ではあったが、確かに存在したのであった。 世界に散らばるドームでも同様の現象が起きていた。 ドーム退避者達は自然の脅威に怯えながらも、生きぬき始めた。 無菌状態のドームから自然に降り立った当初、かなりの犠牲を出したが、数世代で順応し本来の人間らしい生活に立ち返って行った。 いつか地球上には二つの人種が存在する事と成った。 ドーム人とアウトピープルと呼ばれる二つの人種であった。 “人類の歴史は、戦いの歴史である。”と誰かが言った。 二つの人種に戦争は起こらなかった。 お互いの存在を見下しているもののそれぞれを黙殺する事で良しとしたのであった。
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