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西暦3×××年10月…。
あの超地震から10年、人々はドームを捨て、アウトピープルと同化する者、あるいは相変わらず彼らを見下しながら、彼らの恵みに浴す者とに別れて生きていた。
自然は、かつて人類が汚しまくった頃より千年を経て、その力を回復させていた。
そして、懐に帰ってきた人類に果実や水を分け与えて呉れたのである。
人々は農耕を行う事により、作物をも自らの物としていったのである。
ここはかつてニッポン第7エリアとして、特に巨大なドームがあった場所に程近い、アウトピープルの村の区域であった。
そのアウトピープルの集落から少し離れた林の際に、一人の若者が小屋を建てて住んでいた。
アマナ・ガイ…かつて巨大都市型ドーム末期にうみだされた赤ん坊の一人であった。
現在は18歳になり、自然と闘いながら一人で生き抜いて来た、逞しい男であった。
ヤマト系人種の彼は、チャイナやアジア系同様黄色人であった。
眉は太く、涼しげな目と意志の強そうな唇が印象的であった。
彼は、幼い頃からあまり人と接する事を好まない性格のため、自然、集落の人々ともあまり関わらず、いつしかこうして、集落とは違った生き方をして来たのである。
果実には事欠かないし、肉類は愛犬のファルコンが、何処からか野鳥やウサギを捕まえて来るのだから、苦は無かった。
しかし、そんな彼にも、集落の中に僅か二軒だけだが、彼を気にかけてくれる家があった。
村の長、チャン・クンと鍛冶屋のジャック・ヤマサキのふた家族であった。
今日もチャン・クンの二番目の娘エイカとジャック・ヤマサキの三男アードの二人が、差し入れを持ってやって来た。
農作業も休みなので、のんびりとした歩み方であった。
「ガ~イ!…ガ~イ…居る?」
エイカの声が、小屋の周囲に響いた。
いつもの事なので、二人は小屋の前のベンチに並んで腰を下ろし、ガイが来るのを待った。
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