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直ぐにやって来たのは、ガイの飼っている…というよりは、同居…犬のファルコンであった。
大型犬でじゃれつかれると、背の高いアードも押し倒されてしまう程であった。
ファルコンは、嬉しそうに自分の頭をエイカの手にこすりつけて来る。
ガイに早く来いとばかりに、林に向かって二度程吠えた。
その声に応えるように、笹を掻き分けガイが現れた。
「いつもの事だけど…どこに行ってるの?」
「まあな…。」
エイカの言葉に、曖昧に答えておいて、ニッ、と笑う。
「はい、これ…。父が持ってけって…。」
小さな紙包みを手渡す。
「いつもすまんな…。何だ?」
受け取った紙包みを、軽く振ってみる。
「モチ…だって。」
「モチ…?」
ガイが不審そうにいうと、物知りのアードが口をはさむ。
「大昔の保存食さ…。かつての、ニッポンやチャイナじゃ作ってたらしい。」
ガイが包んだ紙をはいでいく。
「これが、モチ…か。」
平べったい白いものが出て来た。
「中に、特製の餡が入ってるって。」
「ふ~ん…。」
ガイは、無造作にひとつを口に放り込んだ。
「意外に美味いもんだな。」
そう言いながら、ガイはアードに包みを差し出す。
アードも一つ取るとかじった。
それから、ファルコンにもやる。
不思議な犬でこういったものが好きなのだ。
「まあ、中に入ってくれ。茶でもいれよう。」
ガイは先になって扉を入る。
モチの包みをテーブルに乗せると、大きめのポットをドスンとテーブルに上げた。
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