16人が本棚に入れています
本棚に追加
壊れ瓦礫の山と化した、今は人気のないドームから拾って来たものらしい。
小さな筒からお茶葉らしきものを、こし器に移し、三つのカップにかざしてポットの湯を注ぐ。
香ばしい匂いが立ちのぼった。
「へ~え…いい香りね。」
「そう思うか?」
ガイは、アードとエイカにカップをすすめ、自らも手にし口元に運ぶ。
「これ…父が作ってるお茶と違うわね。」
匂いをかいでおいて、エイカは言った。
「昔読んだ本に載っててな…蒸したり乾燥させたり、手で揉んだり…結構大変なんだが…。」
「なんて言うんだ?」
アードが珍しげに聞く。
「ニホン茶…緑茶とも言うらしい。」
ガイがぶっきらぼうに答えた。
「甘いものに合うね…これ…。香りも佳いけど美味しいわよ。」
一口すすって、味を楽しむようにエイカが言う。
エイカはニコニコしながらモチをかじり、また茶をすする。
「それはそうと、ガイ…最近何やってるんだ?ドームの方でゴソゴソやってるの見掛けたって人がいてな…あそこ危ないぜ、いつ崩れるか判らないし…。」
アードがカップをテーブルに置きながら言った。
「…ん⁉…ああ…実は、その事なんだが…お前たちにちょっと力貸して貰いたいんだが…。」
ガイの言葉にアードとエイカは顔を見合わせた。
「俺達の力位なら、幾らでも貸すが…いったい何をやろおっていうんだ?」
うんうん、とエイカが頷く。
「ああ…後で話すよ…。」
それからしばらくの間、モチをかじり、お茶を楽しんだ。
「さて、行くか…。」
「何処へ…?」
「ドームさ…!」
最初のコメントを投稿しよう!