殿

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岡部「…由美、美里…すまない…」 岡部は、写真を握りしめ、妻と娘がいる三浦半島を眺めた。 五十嵐「作戦実行艦を除くすべての艦、撤退方角に舵を切り終えました。全速力で撤退開始します」 和馬「了解した」 殿(しんがり)とは、敵の追尾を、可能な限り食い止め、主の撤退を助ける事。 たとえ、主の為に自分の命を投げ出しても。 この作戦を司令長官に打診した後、長官は、一度危険極まりないと言う理由で、棄却した。 しかし、このまま、無防備に撤退し大きな損害を出すよりはと、説得をした。 そこで、渋谷が出した答えは、「命を捨てぬ覚悟がある者」と言う条件付けで、殿部隊を急遽編成。 命を捨てぬ覚悟 日本国軍人ならば、潔く散れと教え込まれる。 だが、死んでしまっては、もう何も出来ない。 もう、日本の土を踏む事も出来ない。 家族に、愛する人に、会う事も出来ない。 命を掛け守る事も、時に大切だが、守るものがあるからこそ、生きることも重要である。 まして、今は、日本を取り返そうとしている時、今は、命を落とすべき時ではない。 渋谷はそう考えたのである。
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