プロローグ

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「……やけにシリアスな顔をしているな」 自宅のベランダから夜空を眺めていた俺に、どこからともなく誰かが話し掛ける。 ……いや、厳密には〈誰なのか〉は分かっていたんだけど。 「クリック……」 俺は彼の名を呼ぶ。 空中に浮いたまま、ゆっくり俺の隣に降りてきたこの男の名はクリック。 〈クリック・ルーンシーカー〉という。 大罪人〈アルティメットルーンシーカー〉らしい。 何でも、罰としてすべての時間、すべての次元、すべての空間に介入し、〈魔法〉というものを集めなければならないんだって。 不老不死の体を持ち、贖罪の旅を続ける青年……って感じかな? 「どうしたんだよ?何かようか?」 クリックには以前、助けてもらったことがある。 でも、それくらいの面識だから、なぜこいつがここに来たのか俺にはよく分からない。 「明日……〈終牙〉を倒すんだろ?」 「……ああ」 ……終牙――ツイガ――というのは、俺達が倒すべき最後の〈思念体〉。 〈宵の断命〉を名乗り、ルナティアを破壊しようとしているんだ……。 まぁ、そいつを倒せば結果的に破壊するのと同じなんだけど。 「……挨拶しといてくれないか」 ……は? 「終牙に、か?」 クリックにたずねると奴はゆっくり頷いた。 ……俺にとってあいつは敵なんだけど、それでも挨拶しろと?
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