1章:始歌

2/6
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
私は走っていた。 何かから逃げるようにこの得体もしれない森を、どこが逃げ道なのかわからない森を、ひたすら走っていた。 そして【何か】が追ってくる気配が突然消えた。 かなり走った。運動音痴な自分では考えられないほどに走った。 「純くん、美紀ちゃん、智子ちゃん………」 友達の名前を呟いた。三人はサークルの仲間で仲良しだ。 今回だってみんなで……。 ううう……  私は一人涙を流した。 なんでこんな事になったの? なにが悪かったの? なにが……なにが……。 私たちを襲ったの? わからない、わからない……でも 助けなきゃ!私が助けないで誰が助けてくれるの!?私が助けるのよ! そう自分に言い聞かせて震える足を元いた場所に向けた。 怯える心に喝をいれ、ゆっくり歩き始めた。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!