1章:始歌

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それは動物の声 いや、動物なんていう生易しモノじゃない。 それは狼の遠吠え いや、狼より凶暴だ。 それは……       怪異の声 四人はその叫びを聞いたとたんに震え上がった。 この世のモノとは思えない、ばか正直な喜びの叫び。 「みんな、逃げるぞ!」 純は叫んだ。そしてみんなテントから出ていった。しかし、テントから出てきたのは、智子、純、美紀だけだった。 彩は出られないでいた。さっきの【声】を聞いただけ足がすくんでしまい。呆然としていた。 そして、外から純の声が聞こえた。 「彩、早くいくぞ!」 その言葉に我に帰った。 は、はやく行かなきゃ…… そう足を前に出した時、悲鳴が聞こえた。悲痛と恐怖と絶望感のある悲鳴が……。 「きゃあぁああぁ」 「なんだこいつら!」 「はやく、はやく逃げよ!」 テントの外では何かが起きていた。 彩は思った。今ここから出たら殺される。でも、ここにいても殺される。 彩は三人が出たテントとは逆の出口からテントを出て、その場を離れた。全力で。後ろからは、助けを求める悲鳴がした。 が、逃げた。本能が逃げろと言っている。 そしていつしか悲鳴は闇に消えていった。
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