変わることこそ肯定すること

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「え、二人とももう食べないの?」 「めずらしー!リッドが残してるな。」 上の会話からわかる通り、その日の昼食は二人とも食欲が芳しくなかった。 内容が悪いかというとそうでも無く、ホットボルシチとやさいサラダというごく普通のメニューだった。 この状況には、ファラもメルディも驚いて顔を見合わせずにはいられなかった。 無理も無いだろう。 普段ならば、リッドの場合二人前くらいなら平気で平らげる上、キールだって一人前は残さずきちんと食べるのだから。 そんなこんなで食事が終わると、まずキールが、そしてその数分後にリッドが、寝室へ休みに来た。 二人とも会話を交わすでも無く、ただベッドの上で転がっている。 キールは空ろな感じで、リッドは機嫌が悪いようだが、両人ともとりあえず喋りたくない気分らしい。 唯、沈黙が辺りを満たしている。衣擦れの音すら、耳障りに思えるほどに…。 そしてそんな中、リッドはいつしか、眠りの淵へと落ちていった。
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