変わることこそ肯定すること

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夢を見た。 雨がふっている。 雨に打たれ、ずぶ濡れになっている。 目の前で誰かが死んで、独りぼっちになる夢だ。 それが誰かはわからない。 ただ、大切な人だというのはわかる。 誰だろう? いったい、誰が? 父さん?母さん? ファラか、それとも…… その刹那、顔が、鮮明に見えた。 「…――キール!!!」 リッドは音をたてて起き上がった。 体中汗をかいていて、息が荒い。 夢の中のキールの顔は無表情だった。それこそ鮮明に覚えていて、目が覚めているのが逆にこわい。 ふと不安になり、キールが寝ている方に向かって声をかけた。 「……キール…?」 返事は無い。 「…キール…キール……いないのか?」 目を凝らして見てみると、そこにはしわのついた布団があるばかりで、キールの姿はどこにも無かった。 それは、リッドに嫌な胸騒ぎを起こさせた。 「嘘だろ、こんな…もう夜だぜ!?真夜中の散歩なんて…シャレじゃねえよっ!!!」 気付けば、外へ飛び出していた。 「キール…!!!」 リッドは、先程のキールの様子を思い出し、どうか無事でと願うばかりであった。   >   リッドは、キールを探し走り回った。 普及作業の最中の町をニ周三周、ぐるりと。 更に息が荒くなった彼は、メルディの家の前で失速し、ゆっくり歩くようになったかと思うと、力が入らなくなりついに座り込んでしまった。
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