変わるから、変わらない

5/9
前へ
/22ページ
次へ
僕とリッドの間は、沈黙だけで満たされていた。暗く澱んだような色の海は、まさしく水平線となるところまで続き、海と同じ色をした空は少しずつ暗くなっていっている。 …ふと、リッドを見る。 彼は空を見上げ、どこか黄昏ているようだった。その見つめている先がどれほど遠いのか、気になりもしたが尋ねようとは思わなかった。 しかし「僕も空を見よう」と思い目を上に向けた瞬間、沈黙に似つかわしくない音が聞こえてきた。   「ぐぅ~~…きゅるるる…」   …一瞬何が起こったのかわからなかったが、すぐに理解できた。リッドの腹がなったのだ。 「リ、リッド…」 「あ、…ははははは…悪い。…あー…そろそろ帰らねえか?腹へっちまってよ」 「あ……ああ。」 僕は立ち上がり、白い服についている砂を払った。…と、その時。 「キール!!!危ねえ!!!」 リッドが剣を抜く音が聞こえた。 「モンスターか!」 とっさに戦闘体型になろうとしたが、しかしその時気付いたが僕はクレーメルケイジを持っていなかった。そして、なす術も無くその場に佇む事となった。 「くっ……こんな時に…うわあっ!!!」 モンスターが僕に襲いかかってきた。とっさに避けたはいいが、装備品など、当然の如くつけてはいない。このままでは、持つはずがない。 そして毒々しいモンスターの牙が僕目掛けてふりかかった。 ―避けられない…どうしたら…!!― 「秋沙雨!」 やられる間一髪で、リッドの技がモンスターに直撃した。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加