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僕とリッドの間は、沈黙だけで満たされていた。暗く澱んだような色の海は、まさしく水平線となるところまで続き、海と同じ色をした空は少しずつ暗くなっていっている。
…ふと、リッドを見る。
彼は空を見上げ、どこか黄昏ているようだった。その見つめている先がどれほど遠いのか、気になりもしたが尋ねようとは思わなかった。
しかし「僕も空を見よう」と思い目を上に向けた瞬間、沈黙に似つかわしくない音が聞こえてきた。
「ぐぅ~~…きゅるるる…」
…一瞬何が起こったのかわからなかったが、すぐに理解できた。リッドの腹がなったのだ。
「リ、リッド…」
「あ、…ははははは…悪い。…あー…そろそろ帰らねえか?腹へっちまってよ」
「あ……ああ。」
僕は立ち上がり、白い服についている砂を払った。…と、その時。
「キール!!!危ねえ!!!」
リッドが剣を抜く音が聞こえた。
「モンスターか!」
とっさに戦闘体型になろうとしたが、しかしその時気付いたが僕はクレーメルケイジを持っていなかった。そして、なす術も無くその場に佇む事となった。
「くっ……こんな時に…うわあっ!!!」
モンスターが僕に襲いかかってきた。とっさに避けたはいいが、装備品など、当然の如くつけてはいない。このままでは、持つはずがない。
そして毒々しいモンスターの牙が僕目掛けてふりかかった。
―避けられない…どうしたら…!!―
「秋沙雨!」
やられる間一髪で、リッドの技がモンスターに直撃した。
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