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「お世辞じゃないよ? ちょっと…結構、本気…かも…」
ハッキリと…言えていないような…。未だに恥ずかしさともどかしさが邪魔をする。
でもいいや。
少なくとも、私の好意ぐらいは伝わっただろう。
私は、自分に添えられた手を握った。
その時の日野さんは、私を見て何か言おうと考えているようにも、戸惑っているようにも見えた。
「……ありがとう」
心から、そう言ってくれた気がする。頬を赤らめて、ホッと安心したその表情が、何よりの証拠だ。
次に私が笑った時は、照れ笑いではなく、本当に嬉しかったから。好きな人の笑顔が見れたから。
“好きなんですよ”
その思いを握った手に込めて、私は笑った。
「そうだ、いいものあげるよ」
何か思い立ったように席から立つと、日野さんは私の手を引いた。
手を繋いで歩くなんて…これは短い間だけでも、日野さんの恋人を気取ってみても大丈夫でしょうか…?
日野さんが先程までいた机の上に置いてあるスクール鞄。
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