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…若干期待していたのは内緒です。
「でも、御礼はもらうよ?」
「あ、やっぱり?」
あれかな。
日野さんって、ああ言った冗談が好きなのかな。
いや、やっぱりからかってるよね。
「あの…さ、もっと気軽に呼んで欲しいの。私のこと…」
胸元でもじもじと手をいじりながら、日野さんは言った。
私に負けないくらい顔が真っ赤ですよ。
「やっぱりさ…好きな人には…名前で呼んで欲しい…じゃない?」
もじもじ日野さん…かわいいんですけど。
「ダメかな?」
「ううん、全然…」
私は大きく深呼吸をして、日野さんと向き合った。
「試しに…呼んでみる?」
「う、うん。お願い」
例えるならその状況は、付き合っているにも関わらず、お互い恥ずかしくて、なかなか会話の弾まない中学生カップルのよう。
「……あ、亜利紗、ちゃん!」
また、声が裏返った。しかも結構な音量で。
「ふっ…ふふ、なんだかくすぐったい」
下の名前を呼んであげるだけなのに、なんでこんなに新鮮なのだろう。
「…返事は?」
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