気紛れな画家

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「紗綾ちゃんには、私が見てる世界がどんなのか、分かる?」 午前中の授業が終わり、元気な男子は外へ、お喋り好きな女子は一つのクラスへ遊びに行き、殆どすっからかんの状態の教室。 「ん?」 次の授業のチャイムが鳴るまで、私と輝は、どこにも行かずに、ここでその時がくるまで静かな時を過ごす。 「想像でいいから…なんだか気になるの」 輝は、目が見えないのだ。 おそらく輝の見ている世界は、とても広くて、酷く寂しいものだと思う。 「んー…。取り敢えず…真っ暗かな? それで…」 輝は決して見えることの無い私の姿を、自分の感覚のみで探る。 「うーん…。なんかよく分かんないな」 輝と言葉を交わす際に、私は必ず彼女の手を握る。 そうする事で、なるべく輝と近い距離にいられる気がするからだ。 「まぁ、体験した事ないもんね」 きっと私がなんと例えようと、輝の見ている世界とは遠いモノを想像しているだろう。 まだ開くことのないその目は、それでも私を見ようとする。
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