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それが他の生徒たちとは、全く異なる空間にいるような気持ちにさせる。
「画家は、何もない筈の私の世界に、色んな絵を描き続ける。なるべく分かりやすく。そして鮮明に。私のわがままな注文も、嫌がらずに、理解するまで何度も描き直してくれる」
私の頭に思い浮かべられるその世界。
言うなればとても巨大な、真っ白いキャンバス。
そこの丁度真ん中辺りで、気紛れな画家が絵を描く準備をしているのだ。
画家は輝の中で、“さて、今日はどんな絵を描くかな”と筆を構える。
「…それ本当?」
画家は輝の聞き取った言葉を材料に、輝の中の私の表情のスケッチを始める。
一瞬で描いたその絵がどんなものなのか、それはきっと輝以外の誰も見ることが出来ないだろう。
「本当だよ。だって紗綾ちゃんの事だもん」
気紛れな画家が驚いて振り向いた。
その表情は、今の私の表情と全く一緒だ。
輝の中の気紛れな画家よ、あんたは私なのか。
「私なの!? 私って画家だったっけ!?」
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