気紛れな画家

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それは春休みに入る前のこと。 学校が終わり、私が輝の家まで手を引いて帰っていた時。 輝の家の玄関の前で、彼女は私の手を引っ張り、急に立ち止まった。 「入院? 手術のために?」 小さくて聞き取りにくかったその言葉は、「手術のために、入院しなければならない」とのことだった。 「そっか…しばらく会えなくなるね。で、どこの病院なの? お見舞い行くよ」 手術は誰でも恐くて不安になるもの。 輝もそうだから、声が小さくなったものだと思い、私はわざと明るい口調で言った。 「しばらくじゃないよ…ずっとだよ…」 輝の声が、震えている。 察することが出来た。 これは恐怖で震えている訳ではないと。 「ずっとって…、どう言うこと…」 私は両肩に手を乗せて、伏せて見えない輝の表情を伺った。 私の動作に気付いた輝は、避けるようにくるりと背を向ける。 「病院ね、海外なの。万全の施設で、有名な日本の先生に手術してもらうんだって…」
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