423人が本棚に入れています
本棚に追加
それは春休みに入る前のこと。
学校が終わり、私が輝の家まで手を引いて帰っていた時。
輝の家の玄関の前で、彼女は私の手を引っ張り、急に立ち止まった。
「入院? 手術のために?」
小さくて聞き取りにくかったその言葉は、「手術のために、入院しなければならない」とのことだった。
「そっか…しばらく会えなくなるね。で、どこの病院なの? お見舞い行くよ」
手術は誰でも恐くて不安になるもの。
輝もそうだから、声が小さくなったものだと思い、私はわざと明るい口調で言った。
「しばらくじゃないよ…ずっとだよ…」
輝の声が、震えている。
察することが出来た。
これは恐怖で震えている訳ではないと。
「ずっとって…、どう言うこと…」
私は両肩に手を乗せて、伏せて見えない輝の表情を伺った。
私の動作に気付いた輝は、避けるようにくるりと背を向ける。
「病院ね、海外なの。万全の施設で、有名な日本の先生に手術してもらうんだって…」
最初のコメントを投稿しよう!