小さな箱

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「要するに」 「要するに!!」  彼女が僕の言葉を反復する。そんな旅立つ前の二人のやり取りが、頭の中にフラッシュバックしている。 「今夜は帰りたくない気分なんだね?」  僕はそう言いながら、その言葉が少し昔の安っぽいドラマのセリフのようで恥ずかしくなっていた。 「今夜も、明日の夜も、明後日の夜も」  彼女は少しはにかみながらそう言った。そして「できるなら遠くまで、うんと遠くまで連れてってほしい」と続けた。 「それってなんか」  僕は頭を掻きながら彼女の顔を見る。彼女は僕がどんな言葉を返すかを待ち構えている。 「それってなんか青春だね」 
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