小さな箱

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「ユウにはこういう気持ちになることがないの?」  僕の瞳をまっすぐ見つめながら、彼女が言う。 「もちろんあるさ」  僕は半ばノリでそのような言葉を返す。いつだって僕はそうだ。刹那的にその場を乗りきろうとしている。 「嘘だね」  そして彼女はそんな僕のことを良く知っている。 「僕は嘘を吐かない」  死んだら地獄行きだな。僕は堂々と嘘を吐く。あぁ神様、憐れな私めをお許しください。 「嘘つき。嫌いな食べ物はないって言ってたあれだって嘘だったじゃない」 「いいや、嘘じゃない。キュウリは僕の中では食べ物だと認識されてないんだ」 「屁理屈」  そう言って彼女が口を尖らせる。断罪が神の手からではなく、天使のような笑顔を持つ彼女から与えられようとしている。  あれは3日前の夜だったな。あのときは、まさかこんなに遠くまで僕たちが旅を続けるとは夢にも思わなかった。  
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