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深雪主催のクリスマスパーティーを思い出の筆頭として神たちの冬休みは過ぎ去っていった。
新学期、2年A組所属の笑留はE組の教室で黒髪の少女の前に立っていた。
椅子に腰をかけたままいぶかし気に彼を見上げる少女は笑留の愛しの君・早紀……ではない。
「名津くん……」
「……何?」
妙にかしこまった態度の笑留に愛音はなんとなく警戒心を覚える。
「冬休みはー、実に楽しかった! しかし、楽しい時間とは早く過ぎていくものだ、そうだろ?」
切な気にため息などついてみせる彼の横顔に愛音はその言わんとしていることを読み取った。
「そこでだねぇ! し――」
「宿題なら見せないよ」
頼む前に断られるという絶対的拒絶の前に笑留の野望は崩れ、彼は教室を飛び出した。
その目尻には光るものがあったとかなかったとかいう。
全速力で自分の教室へ帰ってゆく彼の背中を見ている2人の人物があった。
1人はE組の担任・三条 杏奈だ。
「?」
三条は隣の男子生徒がクエスチョンマークを浮かべているのに気付く。
かなり目立つ金色の髪の男子生徒だ。
「きっとうちのクラスのお利口さんに宿題でも見せてもらおうとしたのよ」
合点がいったのか彼はこれから自分の担任として付き合っていく三条に向かって微笑んだ。
薄めた瞳の色は美しい青だ。
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