罪掛け橋

2/2
前へ
/50ページ
次へ
            あの日貴方は私を捨てた。   離縁と書かれた紙切れ右手に 私は奈落に落ちました。   罪無き息子は泣き喚き、 ただただ私は水面から 見つめる事しかできません。   古井戸覗くは 五つの息子。 見つめる物は 腐りただれる罪深き母親。     ある日貴方を息子は救う。   お母のかんざし黒髪片手と 涙を堪えて助けます。   罪無き息子をどう見ます? ただただ貴方は地下手から 見上げる事しかできません。   枯れ井戸覗くは 十五の息子。 見つめる者は 白き遺骨に抱きつく父親。 息子は貴方を恨んでいません。 私も貴方を許しましょう。これで貴方も懲りたでしょう。 哀れな男を見る目もせずに 貴方を支える息子を見なさい。 あの日貴方が 馬鹿だ阿呆だ白痴だと 散々言って見捨てた息子。知恵は確かに遅れています。 言葉も舌が足らず仕舞い。 しかし立派な息子です。 私は 貴方を あの世で 待ちます。 あの世の橋で待ちましょう。 橋の名前は罪掛け橋。 罪ある親の渡る橋。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加