みーっけ

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卵は小学1年生、ある市の1学年150名の小学校へ入学したばかりである。朝は近所の5、6年生が迎えに来てくれる。 「卵ちゃーん」と呼ばれるとちょっと照れながら、嬉しそうにランドセルを抱え、玄関を出る。玄関を出ると、お姉ちゃんぶった5年生がランドセルを背負わせてくれる。みんなにこにこと一列になって歩き出す。こんな小学生生活が始まり、一学期も終わる頃、卵は母から夏休み中に引っ越すことになったと聞かされる。みんなと別れる悲しさも感じたが、子ども心にも、駄々をこねてはいけないと感じていた。泣かなかった。夏休みも中頃の暑い日に、父の実家のある小さな町へ引っ越した。優しい祖父母と一緒にいられるのはとても嬉しいことだった。小学校のことは忘れて遊んだ。川で石を並べて、水をせきとめプールにしてその中で泳いだ。卵と一つ下の弟、またその二つ下の妹の三人だったが、最高の楽しみだった。とうとう夏休みも明日で終わり二学期がそこまでせまっていた。 二学期、始業式の朝、卵は緊張を隠せずこわばった顔で家を出た。途中、上級生らしい子どもはいたがじろじろこちらを見るばかりで声はかけてこない。自宅から学校まで子供の足で約1時間の道のりを一人で歩いた。転校生として、珍しげにみられながら学校に入り、一年生の教室に入った。そこには10人程が座っており一斉に卵をみた。恥ずかしくてみんなをみられなかったが、一人だけにこにこと笑いかけてくれる顔があった。今思えば、そのにこにこしていたのが裕貴である。今でもその笑顔は卵の宝物である。image=131840570.jpg
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