人魚姫

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嫌われる事も 報われない事も 分かっていた 愛されない事も 泡になってしまう事も 心の何処かで 予感していたの 「ねぇ、君は何処から来たんだい?」 愛しい人が、優しく問いてくれる。 嬉しくて、口が聞けない事を忘れて、答えるのに。 貴方は、悲しそうに笑って。 「無理はしなくて良いんだよ。」 って、言ってくれる。 私が人間にさえならなければ。 私が貴方を見つけなければ。 私が貴方を愛さなければ。 愛しい貴方に、そんな顔をさせずに済みましたか? 私が側にいると、貴方に気を使わせてばかりで。 人間になったばかりの頃は、側にいると言うだけで。 貴方と居れると言うだけで。 それだけで良かったのに。 どうして私と貴方では幸せにはなれないのだろう。 どうして私と貴方は異種族同士なのだろう。「君は、彼女と私を繋ぐ前触れだったのだね。」 そんな残酷な言葉を囁かないで。 優しく感謝の言葉を紡がないで。 こんな気持ち、知らない。 ドロドロで真っ暗。 こんな気持ち、要らない。 どうして私は微笑む事が出来ないの? どうして私は愛しい人の幸せを祝う事が出来ないの? 私はこんなにも、貴方を想っているのに。 「私たちの髪と交換した子の心臓を刺しなさい。」 お姉様、私に愛しい人を殺せと言うの? お姉様、私の心に血を塗れと言うの? 「王子を殺せば、貴女はまた、私達と一緒に海で暮らせるわ。」 あぁ、なんて甘美な。 あぁ、なんて罪深い。 私に禁忌を犯させてまでも。 私を生かしたいのですね。 ごめんなさい、お姉様。 ごめんなさい、愛しい人。 私はこれから、泡になるのです。 海面漂う、泡に。 ごめんなさい、私を愛してくれた人。 ごめんなさい、私がこんなに醜くて。 ずっと、泡になって、見守るから。 嫌われる事も 報われない事も 分かっていたの 愛されない事も 泡になってしまう事も 心の何処かで 気付いていたのよ
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