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次の日。桜は舞い、季節溢れる里中にまたあの人がいる。
決まって夕方。そして制服。校門には自転車がある。
仕事中とは解っていながらも、オレはバイクを校門、自転車の隣に停める。
近付かなくても服装で解っていたが女だった。オレがこっちに来てから同年代の異性は彼女が初めてだった。
「いつもここにいるね」
近付きながら問う。
「んっ、誰ですか?」
涙を拭っているように見えた。
「郵便局のモンです」
「そんなの、見たらわかります」
確かに。この緑な制服着てるし、ヘルメットまで。
「いつもここ通るんだけど、君がいるんだよ。時計見てぼぉーっと」
「なくなるのはやっぱり寂しいです。思い出がたぁくさんあります」
オレには吐けないセリフだった。母校に思い出なんて微塵もない。ただあるのは存在のみ。
彼女のような過去に浸れる人が羨ましく、思えた。
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