8人が本棚に入れています
本棚に追加
駅にはもう真中がいた。手招きして急かす。
「遅ーい。10分遅刻」
言いながらもオレに缶コーヒーを渡す。裏腹ということだ。
電車はすぐに来た。しかしこれを逃したら次は12時台になるらしい。
電車の中は終始無言で。オレはコーヒーをちびちびと飲んでいた。
笠原に着き、こっちだと真中に手を引かれた。
今日は夏に備えるために、真中の服を調達しに来たのだ。
真中の行きつけは学校への通学途中にある、いわゆるファッションセンターみたいなもので。
婦人服メインのオレにはつまらない洋服屋だった。
今日オレが一緒にいるのは、なんでも東京の女性みたいなのに憧れがあるらしく、どんな具合なのか教えてくれとせがまれたからだ。
まず東京にもあまり行かなかったし、ましてや女性の服装なんて、全然わからない。今日は本当は来たくなかったのに。
「これなんかどうかなぁ…」
「い、いいんじゃない?涼しげで」
最初のコメントを投稿しよう!