憂鬱

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泳ぎも上手い彼女はスイスイと、しかし激しい水しぶきの中、1人輝きをまとっていた。 バイトが終わり、入り口の発券所に即行だった。まだ髪が乾ききっていない彼女のショートカットにまた1つ魅力を感じた。 「お待たせ」 「おつかれさん。ん、おごり」 真中は棒付きアイスを差し出してくれた。 「お、珍しいね」 帰り道。自然と“手”には“手”があった。サンダルのパタパタという音が夏を想わせる。 “付き合って下さい”と言った訳でもない。ただ、お互いに好きだっただけなのだ。 「このアイスいくら?」 「100万円」 「ご馳走さん」 かつてオレを取り巻いていた環境はデリートされた。 今は、好きな人がいて、また、好きになってくれる人がいる。 I am not what I was someday
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