憂鬱

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楽しい時間は短く感じると言う。しかし、“感じる”ではなく本当に短い。 ばぁちゃんが倒れて里中の病院に搬送された。 隣の家の赤坂さんというばぁちゃんの同級生が醤油を借りに行ったら倒れていたそうで。すぐに救急車を呼んでくれたらしい。 その時オレは、 ばぁちゃんではなく真中の傍にいた。 埼玉から両親が駆けつけたのは翌日だった。 「お前は何故家に居なかった。何処に居たんだ」 父に問いただされた。 「女…家族より大事な女が出来たか」 「お父さん…」 母が父をなだめようとしてくれている。 「これからはお前が看病をするんだぞ。過労で倒れただけで何の心配もなかったからいいものを…」 その夜は目をつぶれなかった。
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