憂鬱

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しかし一向に退院は許されなかった。いわゆる重い病気があるのだと思った。担当の先生を忙しい中、なんとか捕まえた。 「先生、ばぁちゃんはなんて病気なんすか」 「…ゴメン。今急いでいるから、17時まで待ってくれ」 「小沢さんは、ガンです。胃ガンです。相当悪い状態なのですが、あの元気はどこから出ているのか我々も驚いています」 1ヶ月でばぁちゃんはこの世から居なくなった。早かった。葬式はばぁちゃん家でやった。両親も来た。隣の赤坂さんも来た。真中も来た。小さい時に一回だけ会ったことのあるばぁちゃんの弟さんも来た。いっぱい来た。 オレは部屋でビートルズを聞いていた。泣いた。夕陽を見ながら泣いた。涙で体が干からびるんではないかと思った。 ばぁちゃんは最期まで元気にオレの名前を呼んでいたらしい。 また会うのは何十年先になるだろうね。ばぁちゃん。
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