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「ふぅー…」
アタシはため息をついた
「どーしたの?井上さんっ?」
アタシのため息が聞こえたのか、隣の席の男が話しかけてきた
―誰だよコイツ…名前知らないし、うざ…―
心の中でそう思いながら、アタシは男をシカトし続けた
「ねぇーシカトしないでよぉ、井上さんてさ、めっちゃ美人だよねっ!!俺のタイプ~」
「どぉーも」
アタシは心の中で
「あぁそうですか」
としか思ってなかったが、男があまりにもしつこいから答えてやった
……が
答えてやったアタシが馬鹿だった
男は調子に乗ってさらに話しかけてきた
―何なんだよコイツ…まじうざい、てか意味分かんないし…―
アタシは窓の外を見た
それでも男は話かけてくる
うざいの「う」の字が口からこぼれそうになったと同時に、ガラっと教室のドアが開き、若い男の教師が入ってきた
「ほら、みんな席つけー」
先生が声をかけると、生徒達は渋々とその指示に従い、自分の席に着いた
「担任の塚本先生が体調を崩して入院するそうなので、今日からこのクラスの担任になります。高橋です。教科は英語、よろしく」
先生はそれだけ言うとさっさと出席を取り始めた
「新井~?」「はい」
「飯野~?」「はい」
「五十嵐~?」「はぁい」
「市川~?」「うぃ~」
「こらっお前ら、ちゃんと返事しろ~」
教室にドッと笑いが起こる
「え~と、次は…井上~?」
「………。」
アタシは返事をしなかった
「おーい、井上?」
「………。」
「井上、具合でも悪いのか?」
「………。」
アタシは窓を見つめたまま、ただ黙っていた
「ふぅ―。井上、今日の放課後ちょっと職員室にきなさい」
「………。」
それでもアタシはただ黙っていた
今日の授業は3時で終わり
長い長い説教が待っているかと思うと、やっぱり生きるのはめんどくさい
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