狂いだした歯車

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「ぇ………、嘘でしょ?」 うつ向いたまま、上げようとしない青木の横顔から一瞬見えた光る物がそれが事実だと思わざるを得なかった。 なんでまた、と口を開こうとした優香の口を、延ばされた片手で抑え込んだ。 「しばらく、一人にしてくれないか…?」 そうか…だから皆居ないのか………。 妙に冴えた頭が自分には何も出来ないと悟る事しかできないと警告した。 ただ単にその事実を聞いて、悔しくなった自分に驚いていたのも事実で………。 「嫌、です…。何も出来ないけど、せめて隣に居させて下さい!」 何も聞かないから…、まるで自分の事のようにボロボロ泣き崩れる優香を見て 「何お前が泣いてるんだよ……、ったく、泣きたいのはこっちだっつうのに………、まぁ居たいならいろや」 ポンポンっとリズムにのり私の頭を叩く郁の手は、気付かないくらい細かく震えていた。単に強がりなのか、気のせいなのか………。 横をチラリと見たときに光るソレが無くて、ひたすら私と他愛のない話をして、珍しい事に郁が家まで送っていってくれた。 門の前で然り気無く笑った彼はさっきより力が籠っていて、ホッとした。
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