ある日

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 どくん。  まるで寺の鐘が鳴り響いたように僕の心臓は鼓動した。  目の前の彼女に――僕は恋をしたのだった。 「本当に申し訳ありませんでした!」  必死に頭を下げ、土下座する姿に。  仲間のした過ちを詫びようとするその姿に。  僕は心を動かされた。    土田村襲撃事件。  後にそう言われる事件はある日突然起こった。  山に囲まれたのどかなその村に突如異国人が数十人現れ、村に襲い掛かった。  そして、死者は出なかったものの数十人のけが人、村の半壊、食料の強奪、などの被害が出た。  異国人たちは逃亡。一人も捕われることはなかった。  ぼろぼろの村人が彼の家を訪ねてきたのはそんな時だった。  この事件において重大な役割を果たす彼の名を――仮にMとする。  Mは世間デビューするのが夢だった。  村人の異国人たちを捕らえて欲しい、という頼みは絶好のチャンスだった。  両親はMを止めたが、それでもMは情報から異国人たちが隠れてるといわれてる場所へ向かった。  武器は刀一本という軽装備だったが、腕に自信はあった。  さらに途中同じく世間のヒーローになろうとする男たちとも合流した。  彼らは名をK、S、I、と言った。  そこは無人島だった場所だった。  荒れ果てた海岸に到着すると大きな壊れた船を見つけた。  不審に思い、急いで先へ進むとそこは惨状だった。  ほとんどの異国人が倒れ、苦しそうに呻いていた。  その状況に混乱していると一人の女性の異国人がMたちの前にふらふらと寄ってきた。  彼女はまず、自分が異国人たちの長であると言った。  そして 「すいませんでしたぁっ!!」  と深々と頭を下げ、さらに跪き、土下座の体勢となり、 「何と言ったらいいやら、真に――真に申し訳ありませんでした!」  何度も何度も彼女は謝罪の言葉を並べていく。  やつれた顔、細々とした手足、生気のない表情。  そんな弱りきった彼女は――説明を始めた。
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