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卒業式。
優秀な想い人は、卒業生代表として、答辞を立派に読み上げた。
『梅の蕾が膨らむ、この良き日…。小春日和の暖かさは…私たちの卒業を祝ってくれているよう…』
柔らかなその声は、緊張など感じさせず。
重々しい場の雰囲気に似合わない、軽やかな風を運ぶ。
これで会えなくなるのかと思うと、とても悲しくて、涙が溢れそうになって、堪えるのが精一杯だった。
『私たちの思いはきっと、在校生が受け継いでくれると思っています…。』
卒業生たちが立上がり、在校生の方へ一斉に向く。
そして、叫んだ。
『本日、私たちは、この学校から、飛び立ちます!』
あんなにも溢れそうだった涙は、瞬時に引いた。
代わりに笑いそうになってしまったが、澄ました顔をして、どうにか押さえこむ。
壇上の想い人は知らなかったらしく、唖然と立ち尽くしている。
そして溜め息をつくと、また読みはじめ、格好良く締めくくった。
周りの大人たちの苦笑を浴びてはいたが。
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