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そう言って窓越しに見える神社を指差すと、別れの言葉さえも言わずに去っていった。老人はすぐに見えなくなった。
静寂。
一人一人が、その身に起こったことを理解できずにいた。静かな世界は、まるで幻覚をそそるようにひたすら無地を保っていた。
不意に、流水が言った。
「『アブノーマル』なんだ」
「え?」
「そうだ、『異常』なんだよ、こんな世界は!だから実在するはずがない」
「じゃあ、四人が同じ幻想を見ていたってこと?」
「そう考えれば、ちょっとは健全だろ?」
そうかも知れない。
「おまちどうさま。まだ試作段階だけどね」
突然、風馬のお母さんが現れた。四人はそれまで、ここで待っていた理由をすっかり忘れていた。
その和菓子は、とても可憐な装飾に、夏を意識したらしく水で冷やされていて、涼やかなものだった。
「とても美味しいです」
四人は嘘なく言った。
火香は、そっと携帯電話の時計を見た。
――六時二十三分。
世界が現実へ回帰した、小さな小さな証拠だった。
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