10人が本棚に入れています
本棚に追加
「ホント気になりますよね、転校生」
突然風馬が口を挟んだ。
「そうだよな!気になるよな!?」
ありがとう、風馬。君のおかげでバカの迫害を生き残れた。
「風馬くん、今はそれが問題じゃないの!」
火香は風馬にまで怒鳴った。――そこまでするか?普通。
「……え、でも転校生……」
「だからそれは良いんだって!それ以上言ったら、昨日の新作和菓子宣伝しないから!……あ」
その瞬間、皆が思い出してしまった。
昨日の出来事のことを。
気まずい沈黙が続いた。誰も何も言わないのに、不思議と、みんな思考を共有しているという確信があった。
「――あの、昨日のじいさんって」
大地が話し始めたその時、授業開始を告げるチャイムが鳴り響いた。みんな、そろそろと席に向かって離れ離れになる。
――そうか、あれは夢じゃなかったんだ。大地が心ひそかに抱いていた、現実回帰のための現実逃避も、今ここで崩れさった。
最初のコメントを投稿しよう!