10人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうした?」
「……お前さ、火香のこと好きだろ」
流水は、反対側のプールサイドを歩いている、水着姿の火香を指差して言った。
「……あぁ」
大地は火香を見つめながら頷いた。特に否定する必要もないと思った。
プールの中ではしゃぐ生徒たち。誰も二人に注意がいかなかった。見つめられている火香でさえ、それに気付いていないようだった。
「大分前からなんだろ?」
「……よくわかったな」
知られることに、さほど抵抗はなかった。妙に心が正直に、穏やかになっていた。
ところが、そんな穏やかさもすぐに崩れさる。
「お前の気持ち、みんな知ってるぞ」
「……えぇーーーー!!!!」
はしゃいでいた生徒たちが、一瞬で凍りついた。場が変な沈黙に覆われ、誰もが二人の方を見ていた。――もちろん火香も。
「……どうした、薪半?」
体育教師まできょとんとしている。
「あ、いや。……何でもないです」
最初のコメントを投稿しよう!