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「うん?」
「昨日のことなんだけど……やっぱり信じられないよね。……あのナントカの儀のときの心の落ち着きも、なんか現実味がなかったし」
「……そうだな」
少し要領を得ない彼女の発言を聞いていると、本当は、彼女はずっと考えていたんだという気がした。
そうだ。こんなこと、容易く受け入れられるわけがない。――受け入れられるわけないんだ。
太陽はもう半分近くも沈んでいた。さらに少し暗くなった。
「……ねぇ」
「どうした?」
「信じられないかもだけど、聞くだけ聞いてね。……私、昨日から変な感じがするの」
「えっ?」
大地は聞き返した。
「別に、どこがどうってことはないんだけど……なんとなく、あれからの私は変わった気がする」
「……気のせいだったりして」
大地はふざけた気持ちで言った。だから、普段なら火香に怒られるところなのだが、
「うん……そうかもしれない」
火香自身、本当にわからないのだ。
太陽はもう大半が沈んでいた。薄暗闇が支配するようになった頃、大地と火香は別れの挨拶を交わした。
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