招かねざる変化

14/33
前へ
/150ページ
次へ
 大地は帰宅すると、すぐに自分の部屋のある二階へ上がった。親とは顔も合わせない。  別にとりとめて親のことが大嫌いな訳じゃないけど、高校生なんてこんなもんだろ? 「大地、ご飯食べなさい」  親の声がした。大地は「あぁ」と気のない返事をした。    風馬は、帰宅前にどうしても寄っておきたいところがあった。  自宅のすぐ近く、「あの老人」がいるであろう神社だ。  この神社は、風馬の家の和菓子屋同様、いくら近辺の様相が変わろうとも、住宅地のただ中にひっそりとあり続けていた。  神社に足を踏み入れた風馬は、その瞬間に気付いてしまった。  ――階段の中程に老人が座っている。うつむいて顔は見えなかったが、灰色のローブ、長い杖。  風馬の記憶が蘇った。  間違いない。昨日の出来事は現実だったんだ。  その時、うつむいていた老人が、こちらに顔を起こした。 「何か用かな、風の術師よ」  老人は優しく言った。
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加