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大地は帰宅すると、すぐに自分の部屋のある二階へ上がった。親とは顔も合わせない。
別にとりとめて親のことが大嫌いな訳じゃないけど、高校生なんてこんなもんだろ?
「大地、ご飯食べなさい」
親の声がした。大地は「あぁ」と気のない返事をした。
風馬は、帰宅前にどうしても寄っておきたいところがあった。
自宅のすぐ近く、「あの老人」がいるであろう神社だ。
この神社は、風馬の家の和菓子屋同様、いくら近辺の様相が変わろうとも、住宅地のただ中にひっそりとあり続けていた。
神社に足を踏み入れた風馬は、その瞬間に気付いてしまった。
――階段の中程に老人が座っている。うつむいて顔は見えなかったが、灰色のローブ、長い杖。
風馬の記憶が蘇った。
間違いない。昨日の出来事は現実だったんだ。
その時、うつむいていた老人が、こちらに顔を起こした。
「何か用かな、風の術師よ」
老人は優しく言った。
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