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流水は、自分の部屋でテレビを見ていた。別にお気に入りの番組があるわけではないが、なんとなく。
その時、ドアの向こうから声がした。
「流水クン、ご飯食べる?」
「いや、まだいい」
流水は即答した。
「ちょっと、その音。テレビなんか見て!今日から試験期間でしょう!」
「そうだけど」
うちの母親は勉強、勉強ってやけにうるさい。
「大丈夫だって、定期テストなんか」
「あのね、流水クンは最低でも九州大学レベルは合格しないといけないの。そのために、これから準備を――」
「行く気ないから。何回も言ったけど」
まったくこの人は。人がちょっと勉強ができるだけで、やれ偏差値だ、やれお受験だ――。
俺は普通の大学にラクして入れればいいだけなのに――。
「姉ちゃん、今日の晩メシ、あるか?」
「うーん、微妙」
火香は困っていた。
思いの外食べ物の減りが早く、冷蔵庫にはほとんど食品が残っていなかった。
こんなことなら、帰りに買って帰ればよかった――。
「しょうがない、これから買いに行こう。祐介、晩ご飯遅くなるけど、ゴメンね」
火香は、そう弟に謝った。
「いいって」
弟の祐介は言った。
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