六時二十分 夕暮れ

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「わたしは、マンガ喫茶の近くがいいかも」  マンガ喫茶とか言っているこの少女は、弓澤火香(ユミサワ ホノカ)。勉強もスポーツも平均レベルだが、顔の面ではなかなかの優等生、以上、薪半大地の言葉より。   「路上に、静かもマンガ喫茶もあるか。っていうか、なんで自ら望んでホームレスになるんだよ!」  いたいた、まともなの。枯白流水(カレシラ ナガレ)は、この三人には釣り合わないほどの博学多才。校内はもちろん、全国模試三十位以内の常連だ。面白半分でアホと付き合っているらしい。ちょっとプライドが高いことを除けば、性格も問題なし。   「そんなこと言っても……いいぜ?路上暮らしは」  大地が言った。 「おまえ経験者か!マジ意味わかんねぇ」   「そうですよね」 「そうよ」  流水の揶揄に、なぜか風馬と火香が賛同した。   「なんだよ、二人とも。俺の味方じゃなかったのか?」 「それは、適当にあわせただけです」 「そんな……。火香にまで裏切られた」   「ここで白黒ハッキリしておこう。本当に『路上暮らし』がしたいのは誰だ?」  流水が言った。三人はいっせいに大地を見る。 「俺も冗談だよ!?ホントだよ!」  大地は必死に否定した。    ゆるーい夕方は、ゆるーく過ぎていく――。
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