六時二十分 夕暮れ

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「火香、こっちガン見してるんだけど」 「うん。かなり気持ち悪い……」 「それにしても……いるんですね、あんな年齢(とし)でオタクなんて」 「バカ。あれは特殊メイクだよ。本当はもっと若くて、キャラクターになりきろうとして、ああなったんだ」 「そこまでしても、コスプレってしたいものなんですね……」      本当に不意だった。  その時、老人が言ったのだった。 「薪半、大地……弓澤、火香……涼、風馬……枯白、流水……おぉ、間違いない」    名前を読み上げられた四人は、いっせいに固まってしまった。見ると、老人は何かを確信したような穏やかな笑みを浮かべて、いまだにこちらを見ている。  どういうことだろう?    ついに意を決して、風馬が声をかけた。 「あの、おじいさん……いま、僕たちの名前呼びましたよね。どうして、ご存知なんですか……?」  風馬らしい丁寧な口調だった。老人も、いっそう優しい表情をして、答えた。   「わしに分からないことはないのじゃ、『風の術師(じゅっし)』よ」
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