10人が本棚に入れています
本棚に追加
「火香、こっちガン見してるんだけど」
「うん。かなり気持ち悪い……」
「それにしても……いるんですね、あんな年齢(とし)でオタクなんて」
「バカ。あれは特殊メイクだよ。本当はもっと若くて、キャラクターになりきろうとして、ああなったんだ」
「そこまでしても、コスプレってしたいものなんですね……」
本当に不意だった。
その時、老人が言ったのだった。
「薪半、大地……弓澤、火香……涼、風馬……枯白、流水……おぉ、間違いない」
名前を読み上げられた四人は、いっせいに固まってしまった。見ると、老人は何かを確信したような穏やかな笑みを浮かべて、いまだにこちらを見ている。
どういうことだろう?
ついに意を決して、風馬が声をかけた。
「あの、おじいさん……いま、僕たちの名前呼びましたよね。どうして、ご存知なんですか……?」
風馬らしい丁寧な口調だった。老人も、いっそう優しい表情をして、答えた。
「わしに分からないことはないのじゃ、『風の術師(じゅっし)』よ」
最初のコメントを投稿しよう!