25人が本棚に入れています
本棚に追加
「…おやおや…そんなにかしこまらなくても良いんだよ。」
その人は死した少女相手に微笑んでいる。それも少し若い笑顔だが、その瞳はどこか深さをおびていた。
「…お兄さん、」
と、その人は起き上がろうとしている彼に声をかけた。
「無理をしちゃいけないよ。君が苦しんでいる顔を見て、もっと辛い子がいるんだから…」
その人はなおも、微笑みながら、シーラに視線をやる。
「は…ぁ…」
彼は諦めて横になり、少しため息のような返事をした。
「彼女に感謝しなさい。
彼女が私に助けを求めてくれなければ…」
「…!!」
やはり、シーラが助けてくれたのだろうか。
はじめは化物にしか見えなかったシーラが、おどおどとした表情で心配そうに彼を見つめている。
しかし日は傾き、陰りに入ったシーラの肌は、すでに彼女が死人である事を思い出させられた。
「…旅をしているのなら、今日は泊まって行くと良いよ。
さて…お腹が空いただろ?
私は夕飯の支度でもするか…」
「…ぁ…」
ガチャン…
彼は、呼び止めようとしたが間に合わなかった。
最初のコメントを投稿しよう!