―生きていた頃―

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  母親は、ただシーラの手を包みながらしっかりと耳を傾けた。     「人にはひとりひとり神さまがいるのよ。 人の魂はね… 天使を構成するものと同じでずっとずっと不滅なんだって… だから私、怖くないわ。」   シーラはいっそう微笑んだ。   「今 目を閉じて、ずっと開くことが無くても、私はきっと… 母さんが寂しくなった時に、隣に居てあげることができるわ。」     シーラは続けるが、 母親は、とうとうたまらなくなって、こらえていた涙がゆっくりあふれ出す。     「母さんが産んでくれた体は無くなっちゃうけど… 母さんも育ててくれた魂は、きっといつまでも残って、母さんの側にいるから…」   シーラの母親は、あまり神の存在を信じて居ない。つまり、自力の中に生きていると考えていた。 しかし、シーラの話しに、自分は耳を傾けなければ、と、涙を流しながらも必死で聞いた。 神より、自分の事を気遣ってくれる、最期の時を迎える娘が何よりも救いになっているのだから。
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